むぴー先生の新作読切『限りある私たちは...』
漫画っぽくない絵の雰囲気が特徴的なので作品サムネを見た瞬間に、
あ!『ちかちゃんはもっとしりたい』の人だ。って気づきました。
前作であるこの作品も非常に面白いのでぜひ読んでみてください。
感想
読切を読むと『意外とみたことないけど良い設定だなぁ』と感心することがありますが、今作はまさにそのタイプでした。
子供の時点で自分の寿命を検査で知ることができる、という少しSFっぽい設定ではありますが話自体は大分リアル寄りです。
主人公は小学校の授業で『人生計画表』を書き、その通りに26歳まで生きてきたという
計画的に生きるタイプの性格をしているのですが
この性格が私には結構刺さりましたね。
いやーわかるなぁと。
私も目標を立てたり、それを分解して着実に進めたいタイプなので非常にわかる。
主人公と歳も近いので尚更です。
そして人生計画表に書いた『彼氏を作る』などの恋愛項目が達成できず焦る気持ち、
非っっっっっ常にわかる。
弟は何年か前に結婚してすでに家庭を持っているのに、当の私と来たら。。。
...
とりあえず私には非常に刺さる性格でした。
そしてこの主人公のみつき、親友のかのん、マッチングアプリで出会う蔵田さん、この3人しか登場人物はいないのですが、
それぞれが本当に良いキャラをしてるんですよね。
例えば蔵田さんは主人公とデートを重ねるんですがその中で、
『一番好きな場所に連れていく』というデートにて蔵田さん発案で公立図書館にいくんですよ。
そこで蔵田さんがなぜ図書館が好きなのかという話で、
返却棚の本を読むのが好き、と話すシーンがあるんです。
曰く、誰かが返却した本を通じてその人が最近気にしていること、大事にしていることを知り、
それらの本を読むことで他の人の人生に思いを馳せることができる。
返却棚の本を見てこうした楽しみ方ができるというシーンなのですが、
読んでいた私は素直に感心してしまいました。

その話を聞いて2コマ目の主人公のリアクションが本当にその通りだなと。
人が好きなもの。それの何が好きなのか。なぜ好きなのか。
これを掘ると非常に面白く、今までなかった価値観に触れたりすることができるんですよね。
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そして2人に比べて出番の少ない、主人公の親友かのんも非常に印象に残ったシーンがあります。
おそらくここはかのんを印象付けたいシーンとして描かれた訳ではないと思うのですが、
蔵田さんが寿命を偽ってアプリに登録していたことが判明するシーンです。
蔵田さんは自身の寿命を80歳として登録していたのですが、本当の寿命は44歳であると打ち明けます。
それを聞いたとき既に主人公は蔵田さんに惹かれていたので、悲しむわけです。
将来を見据えていた相手が自分よりも21年早く死んでしまうことが確定しているので当然です。
そこで親友のかのんに失恋を報告するんです。

ここね。
私はここをみてこの作品はマジだと感じました。すごく。
この作者さんは"分かってる"と。
もうね、女性の親友ってマジでこうなんですよね。
少なくとも我々男性側から見ると本当にそう。
『えー何その男モラハラじゃん』
『何それ絶対クズ男だって、もう会わないほうがいいよ』
『絶対すぐ別れた方がいいって!!なんなら私が言ってあげようか?』
こうした会話が我々男の見えないところで行われる訳です。
こういった裏での会話を経て、我々の前に現れる彼女。
こちらからしたら”え、何で??”と驚いてしまうような選択を本当に突然突きつけてくる訳ですよ。
正直、男性なら誰しもこういった彼女の奥にいる友人関係のアドバイスに掻き回された経験があるのではないでしょうか。
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そんな各キャラの考えや個性がちゃんと立っている今作ですが、
中でも一番好きなシーンがあります。
このシーンがあったから私はこの作品が非常に好きなのですが、
蔵田さんが主人公のどこを好きになったのかを回想するシーンで以下のセリフがあるんです。

『すぐにまとまらない俺の言葉を静かに待ってくれる人だった』
もうね、わかるぞ蔵田。
若い時はハキハキしてて明るい人だったり、キラキラしている人に惹かれたりもするんです。
でもね、色々と経験するとわかるんですよ。
こっちの話をしっかり聞いてくれる人がどれほど心地良いか。
この良さというか、価値がわからない人もいると思うんです。
実際私も昔はそうでしたしね。
でも海外で仕事を始めて、言語力で周りよりどうしても劣ってしまう環境に身を置いてわかる。
頭の中に言葉は浮かぶ。それを伝えるストーリーも浮かんだりする。
しかしそれを自然な会話が期待する速度で頭の中でパッケージして出すってすっっっごく難しいんですよ。
テンポが遅くても。
言葉がまとまっていなくても。
間違っていても。
こちらの言葉をニコニコしながら静かに待ってくれる人って本当にたまにいるんです。
そういう人がどれだけありがたいか。
どれだけ心地良いか。
こういったことを考えさせられるシーンでした。
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登場キャラ全員の性格がすごく気持ちよく、そして個性がしっかりしているため非常に楽しく読める作品でした。
ただ余談ですが、
蔵田さんの一人称"俺"って、
いやお前は"僕"やろ!!
って思いました。
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